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リサイクル神話を打ち砕く:バージン・プラスチック製のカード問題に取り組むべき時が来た

2023年6月29日

著者:Mastercard、サイバー&インテリジェンス プレジデント Ajay Bhalla

現在の決済カードは、薄さ0.76ミリのプラスチック板に莫大な機能が詰まっています。購入時のセキュリティを確保するマイクロチップ、非接触決済を可能にするカード内を周る金属製アンテナ、偽造を防ぐホログラムなどがカードに埋め込まれています。これはまさに、何十年にもわたる技術革新と業界全体の協働の賜物です。

一方、技術の進歩にかかわらず、カードの素材はほぼ変わっていません。現在流通している250億枚のカードのほとんどは、分解されないPVCのようなバージン・プラスチック(リサイクル原料などの再生素材を使わず、新しい原材料のみを使用して製造されたプラスチック)で作られており、中に金属やその他の素材が埋め込まれているためリサイクルが難しい状態です。結果として、大半のカードは既にプラスチックごみで溢れている埋立地に廃棄されることになります。

この問題を解決し、環境への負荷を低減するためには総力を結集する必要があります。Mastercardはそのことを念頭に置いてサステナブルな取り組みを行っており、今年の4月には2028年以降新しく発行されるすべてのMastercardに持続可能な素材の使用を義務付けることを決定し、さらにデジタル決済への長期的な移行を加速するため、プラスチックカードの発行をしない選択ができるデジタル・ファースト・カード・プログラムなどを進めてきました。

Mastercardでは、すべてのプラスチックカードがカード発行会社(金融機関、カード会社)やリサイクル・センターで簡単にリサイクルされ、プラスチック汚染の危機を少しでも和らげることができる未来を目指しています。現在使用している決済カードを生み出した高度な技術と協業を、安全で持続可能な方法でプラスチックカードを廃棄するために応用すべきであると思います。

目標を達成すべく、Mastercardは回収、輸送、リサイクルを含め、世界中で実施可能なカード・リサイクル・プログラムを企画の上、自社の国際決済ネットワークを使用するパートナーに協力を呼びかけました。現在、英金融大手HSBCとともに英国の一部の支店でカードのリサイクル・サービスの提供を開始しています。

Mastercard会員は、銀行支店内の安全な専用回収ボックスに期限切れの決済カードを投函することができ、投函されたカードは回収ボックス内でシュレッダーにかけられ内蔵チップも破壊されるので、カード情報が盗まれることもなく安心です。

細断されたカードは、リサイクル・パートナーに送られます。英国では、TerraCycle(テラサイクル)が請け負います。同社は歯磨き粉のチューブからマスカラブラシ、水のフィルター、コーヒーカプセルまでリサイクルが困難な製品の再資源化に20年以上取り組んできました。シュレッダーにかけられたカードの砕片は分別され、プラスチックはペレットやパウダーに再生され、他の製品に再利用されます。

イングランド北部にあるMastercardのDigiSec Labは、2018年からプラスチックカードのリサイクルと持続可能性に優れたカードを開発する方法を追求しています。具体的には、カードを切断、粉砕し、ダイヤモンド鋸刃を使って断面を露出させ、走査型電子顕微鏡や赤外線分光光度計で検査し、カードの物理的、化学的構造を研究しています。

また、Mastercardではカード製造過程で消費されるエネルギーや排出される二酸化炭素、廃棄物の量にも注目しています。サステナブル・カードの厳しい基準を満たしたカードには、環境に優しいカードとしてMastercard認定バッジが与えられます。

2021年以降、92カ国の403以上の金融機関やフィンテック企業がMastercardのサステナブル決済への取り組みに賛同し、承認されたリサイクル素材、リサイクル可能素材、およびバイオ由来の素材を使って2億3,500万枚のMastercardカードを発行しています。これらの素材には、リサイクルされた海洋プラスチックや砂糖、トウモロコシを原料としたバイオプラスチックが含まれています。

Mastercardはすべてのカード発行会社に対し、バージン・プラスチック製カードのリサイクルを推進するための協力を呼びかけています。Mastercardが専門知識を提供し、リサイクル・パートナーを紹介し、発行会社が効果の高い独自のリサイクル・プログラムを最小限のコストと労力で実施できるようサポートします。

ビジネス全体を通して、Mastercardは気候変動への取り組み方について真剣に検討しており、2040年までに温室効果ガス排出量のネットゼロ達成を掲げ、自社のカーボンフットプリントの削減、Priceless Planet Coalitionを通じた1億本の森林再生樹木の復元を目指したパートナーとの協力、そして消費者がより多くの情報に基づいた購買決定ができるようMastercardカーボン・カリキュレーターを提供するなど、様々な取り組みを行ってまいりました。

よりサステナブルな未来のために、決済カードを進化させることは必要不可欠です。