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ホワイトペーパー

明日への道筋:2025年以降を見据えた観光地戦略の策定

観光イラスト

はじめに

今日の世界では、旅行者のモチベーション、好み、感情が変化

ユニークな体験ができる観光地を訪れる観光客が増えています。彼らは旅行予約体験を自由にコントロールできることを重視し、デジタル対応している観光地を訪れることを好みます。加えて、費用対効果を重視し、ますます目的意識を高め、訪れる地域社会や環境への配慮と関心を示すようになっています。

また、旅行者数自体も回復しています。2022年に世界の旅行・観光セクターが軒並み回復し、2023年に勢いが本格化した後、2024年には、旅行者数、支出額、世界経済への寄与度において、パンデミック以前の水準に戻るか、一部の市場やセグメントではそれを上回ることになると見られます。1

2024年第1四半期のデータを分析したMastercard Economics Instituteの2024年旅行トレンドレポートは、消費者の旅行支出が依然として堅調であるだけでなく、旅客数が増加していることを示しています。2UN 観光機関のデータによると、同期間の国際観光客到着数はパンデミック前の水準の97%に達しており、2億8500万人以上の旅行者が移動しています。3さらに、旅行者は再び旅行に出かけるようになっただけでなく、以前より長いレジャーを重視する傾向が強まっています。Mastercardの分析では、平均的な旅行者の旅行期間は、2019年の同時期と比べて1日長くなっていることが明らかになっています。。4

限界を打ち破る

2024年以降の旅行

10日中9日

世界的に見て、クルーズ船と航空会社への10日間の過去最高支出日のうち9日が2024年第1四半期に発生しています。

1日増

観光客は休暇に費やす時間が増えており、旅行日数は新型コロナ・ウイルス感染症流行前の傾向と比べて約1日長くなっています。

12%

体験型アクティビティやナイトライフへの支出は、平均で世界の観光売上高の約12%を占めています。

コンサートからスポーツ・イベントまで、記憶に残るイベントが旅行者を惹きつけているのです。

出典:Mastercard Economics Institute、「2024年の旅行トレンド:境界を超える」、2024年第1四半期

世界経済フォーラムの2024年旅行・観光開発指数では、この業界の継続的な成長は、抑制されてきた旅行需要の持続的な回復と、アジア市場の旅行制限の解除、つまり世界の他地域より遅れていたことによる波及効果によって牽引されると予測されています。5世界経済の先行きは不透明であり地域紛争という不確実性はあるものの、消費者の旅行への需要は依然として大きいままです。

将来を見据えた観光地の開発

Mastercardでは、世界の旅行・観光業界のさまざまな組織と提携し、集計・匿名化されたデータから深い分析や知見を育成することで、旅行者が何を求め、何を期待しているのかを理解し、観光地がどのように対応できるか、またどのように応すべきかについての専門性とガイダンスを提供しています。当社は、世界中のどこでもシームレスな支払い体験を実現することで、世界のあらゆる地域を訪れる観光客が、地元の人と同じように支払いができるよう支援しています。

当社は、旅行や体験への世界の消費者支出について他に類を見ない視点を持つとともに、当社のグローバル・ネットワークとAI、アイデンティティ、サイバーセキュリティ、モビリティに関する幅広い技術的専門知識を活用して、世界中の観光地と協力し、持続可能なソリューションでレジリエンスを強化しながら、観光地戦略の改善を支援しています。

旅行・観光業界は、観光客、地域社会、そして環境の進化するニーズに対応し、適応するために急速に変化を遂げています。本ホワイト・ペーパーでは、観光地が旅行者の豊かな体験へのニーズに応えるためにどのようにサービスを調整しているか、マーケティング戦略や計画立案戦略を改善するためにどのようにデータや分析結果を活用しているか、そして旅行者の体験を向上させるためにどのように最先端技術を採用しているかを解説しています。

観光関連組織は、これまで以上にマーケティング戦略を最適化し、オーバーツーリズムを効果的にコントロールし、変化の多い経済環境がもたらす機会を捉え、持続可能性を優先して環境リスクを軽減しながら、地域社会や中小企業のための包括的な経済発展を確保する必要があります。旅行業界の将来的な成功、そして我々の大切な観光地の将来的な成功は、これにかかっています。

将来の観光客

今後の旅行行動を左右する主なトレンド

消費者の旅行意欲の再燃が、新たな行動様式を生み出しています。Mastercardの旅行・観光の専門家は、将来の旅行者の主な特徴と動機をまとめ、旅行・観光エコシステム全体のパートナーに情報を提供し、助言し、刺激することで、観光地の価値提案を強化し、マーケティング戦略を啓発し、環境保護と地域全体が恩恵を受けるような成長を促進するためのイニシアチブを確立できるようにします。

 

 

ウェイターによる決済のイラスト

パンデミックから生じた最も強力なトレンドの1つは、消費者の「モノ」への支出よりも「体験」への支出を優先したいというニーズであり、その中でも旅行がトップに挙がっています。MastercardのSpendingPulse Destinationsの最近の調査結果によると、今年第1四半期の体験やナイトライフへの支出は世界の観光売上の12%を占め、少なくとも過去5年間で最高水準となりました。6全世界で、旅行者は支出額の約10ドルのうち1ドルを体験とナイトライフに費やしています。7

さらに、Mastercardによる24カ国16,000人以上の人々を対象とした調査では、消費者の約9割が、2024年に2023年と同じ金額、またはそれ以上の金額を体験に費やす予定であると解答しました。8旅行行動を促進する要因のうち、多くを占めるのは、新しい体験を楽しみたいというニーズです。実際、回答者の26%が、これが旅行する主な理由であると回答し、41%が、情熱的な体験を楽しむためだけに海外へ、あるいは大陸を超えて旅行すると回答しています。9

オンライン・ショッピングのイラスト

現代の旅行者は、もっと旅行したいだけでなく、より賢く旅行したいと考えています。具体的には、旅行者は旅行体験を最初から最後まで自分でコントロールしたいと考え始めています。これはパンデミック以前から新たなトレンドでしたが、近年には勢いを増しています。旅行者の間では、旅行の計画、予約、旅程管理といったあらゆる面において、完全な自主性を求める傾向が強まっています。McKinsey & Companyが2024年に実施した調査によると、過去1年間に旅行代理店を利用して旅行を予約した旅行者はわずか17%に過ぎませんでした。これは、旅程を完全にコントロールし、把握したいという旅行者のニーズの高まりを示しています。10

旅行者の間では、予約管理プロセスが完全にデジタル化されることを求める傾向が強まっており、大多数の旅行者が、デジタル体験の質が予約の決め手になると答えています。間違いなく、生成AIは旅行体験の進化において重要な役割を果たし、旅全体を通してより多くの情報、選択肢、コントロール、そして自由をもたらすと見られています。11

ノートパソコンで作業している女性のイラスト

世界経済の見通しは数年前と比べて平均的には明るくなっているかもしれませんが、消費者は依然として価格に見合った価値を求めています。Mastercardの最近の調査によると、一部の市場では、旅行先でのカジュアル・ダイニングへの支出が高級ダイニングを上回っていました。これは、観光客がより手頃な価格帯の選択肢を好む傾向を浮き彫りにしています。12

Booking.comが27,000人の旅行者を対象に行った調査では、回答者の50%が自国よりも生活費の安い旅行先を希望していることが明らかになりました。13 この傾向は、国際観光客の50%以上を受け入れているヨーロッパで特に顕著であり14、ブカレスト、ワルシャワ、ブダペスト、プラハといった手頃な価格帯の旅行先がますます人気を集めている一方、スペインのコスタ・ブラバやコスタ・デル・ソルといった、よりコスト・パフォーマンスの高いビーチ・リゾートも依然として高い人気を誇っています。15

川の上のボートのイラスト

観光客全体の数が増加するのに合わせて、目的意識の高い旅行者が増えています。具体的には、より持続可能な選択を望み、訪れる目的地に良い影響を残したいと考える旅行者が年々増えています。16 Booking.comサステナブル・トラベル・レポート2024によると、旅行者の71%が訪れた場所を到着時よりも良い状態に残したいと考えており、2023年の66%から増加しています。17

これには環境への影響だけでなく、観光地の背後にある地域社会へのより広範な社会的・経済的影響も含まれます。観光客は、二酸化炭素排出量削減に貢献するユニークな体験を求めたり、より本物で真にローカルな体験を可能にする観光地、ツアー、またはアクティビティを選択したりすることに注意を払うようになっています。また、地元の小規模・中小企業を支援することにも意識を向け始めています。旅行者の中には、旅行における選択を自身の価値観に合わせ、倫理的な消費や宿泊施設を提供する企業への支出を優先することが重要だと考える人もいます。

ホテルのイラスト

ビジネス旅行の回復はレジャー旅行に比べて遅れているものの、近年その特徴は変化しており、観光組織にとって新たな機会を生み出しています。

ビジネスとレジャー旅行を組み合わせたブレジャーは、今後も定着するでしょう。Expedia Groupが2023年に実施した調査によると、出張者の75%以上が今後の出張にレジャー活動を組み込む予定であることが明らかになりました。この傾向は特に若い世代に広まっており、ミレニアル世代の43%とZ世代のほぼ40%が、来年にレジャーとビジネスを組み合わせた旅行を計画していました。18


さらに深掘りする

本稿の次のセクションでは、これらのトレンドをさらに詳しく掘り下げ、今日の旅行者がもたらす課題と機会に観光組織がどのように対応しているか、そして世界各国や地域社会の革新的なアプローチを紹介します。

体験の活用

将来の観光経済の原動力

今日の旅行を支えている原動力は、情熱です。観光客が自然景観や人々、文化、歴史とのより深い繋がりを求めるようになるにつれ、観光地側もそれに合わせたサービスを提供するようになってきています。2020年と2021年に旅行ができなかったことにより、特に若い世代の旅行者の間で、大切な瞬間を優先したいという思いが高まったと見られます。19 つまり、今日の一般的な旅行者のニーズに応えるうえで大きな力を発揮しているのは、パーソナライゼーションであるといえるでしょう。

観光地は、その多面的な魅力をアピールするために体験型観光に注力

スコットランドにある城

たとえば、スコットランド観光局(VisitScotland)は、観光客に向けて、「一生に一度の旅」や、スコットランドでしか体験できない旅程を紹介しています。蒸気機関車ジャコバイト号が牽引する列車に乗って旅をしたり、ネス湖を見下ろす何世紀も前の城に泊まったりするなど、スコットランド観光局はスコットランドならではの特別な体験の重要性を強調しています。その戦略は功を奏しているようで、2023年の外国人観光客数は2019年と比較して15%増加しました。20

Invest Indiaも国内旅行者と海外旅行者の両方へのサービスを強化するために同様のアプローチを採用

日の出のタージ・マハル

インドにおける体験型旅行の概念を再定義するとともに、顧客ロイヤルティを高める機会を提供するために、Invest IndiaとMastercardはインド観光省の支援と指導を受けながら、機能を強化したpriceless.com™を立ち上げました。これは、グルメ、スポーツ、エンターテイメント、ウェルネスなど、ダイナミックに進化する人々の興味を満たせる10の分野にわたる魅力的な体験の開発に注力しており、旅行者は有名ヨガインストラクターとのプライベートヨガクラスに参加したり、かつて王族が所有していた歴史的な宮殿に滞在したりするなど、インドならではの体験を満喫できます。21

インド:Priceless Experiencesで体験型旅行を再定義

このプログラムは、今日の旅行トレンドを取り入れ、国内外の旅行者が隠れた名所を探索できるようにすることで、素晴らしいインドを探検したいという旅行愛好家の願望を満たすことを目指しています。

  • 豪華なディナーと、象徴的なクトゥブ・ミナールの息をのむような絶景
  • オールド・アグラの厳選された散策コース
  • 有名な栄養士Pooja Makhijaとのウェルネス・デー
  • 有名ヨガインストラクター、Anshuka Parwaniによるプライベートヨガ教室
  • 王族が所有していた壮麗な宮殿に滞在する
  • 有名なYasmin Karachiwalaによるスペシャル・ボリウッド・ワークアウト
  • 限定グルメ体験
デリーのLoya Taj宮殿。

インサイトを活用する

観光地を選ぶ革新的なツール

都市の港にいる女性

個々の観光客を理解して各キャンペーンを最適化

観光当局が戦略や政策を策定・形成していく上で、民間部門がデータと分析を提供することで当局を支援し、貴重なインサイトを生み出し、長期的な価値を創造し、より高い投資収益率を実現することができます。豊富なデータは、観光地がターゲットとする旅行者を理解・定義し、それらの旅行者を惹きつけ、呼び寄せ、観光地の提供内容を向上させ、そして重要なことに、そうした取り組みを評価し改善するのに役立ちます。質の高いデータがあれば、観光地の管理組織は単に情報を提供するにとどまらず、変革をもたらすことができます。

 

 

官民連携で、データを活用して観光地計画を変革する一つの方法は、持続可能性に関する政策や取り組みを通して観光地計画を変革することです。旅行者の持続可能性に対する認識を明らかにする質の高いデータが得られれば、観光地の管理組織は提供するサービスを調整することができるため、より持続可能な旅行を実現し、責任ある消費を促進することができます。

 

 

スペインの観光振興機関であるスペイン観光推進局(Turespaña)は、近年、持続可能性を最優先事項とするためにマーケティング戦略を根本的に見直しました。世界の旅行者のスペインへの関心がかつてないほど高まる中、世界で2番目に多くの観光客が訪れるこの国は、環境保護への取り組みを強化し、観光バリュー・チェーン全体に持続可能な手法を取り入れるとともに、観光客とスペインの地元文化との心からのつながりを促進しようとしています。22

この目的を支援するため、Mastercardはスペインを訪れる外国人観光客の意識を調査する分析を実施するとともに、同国における持続可能な体験への潜在的な支出傾向を分析しました。調査結果によると、インタビューを受けた観光客の約70%が、より持続可能な旅行のためなら5%の割増料金を支払う意思があることが明らかになりました。しかし一方で、旅行者の約3分の1が、より持続可能な選択をする上で障壁になっていることは、どの旅行オプションが最も持続可能であるかに関するデータが不足していることだと回答しました。23

同様に、得られたデータは観光地戦略やマーケットキャンペーンが、変化する観光ルートをより適切にモニタリングし、反映させるのに役立ちます。2024年第1四半期には、中国のインバウンドおよびアウトバウンド観光経済が力強い回復を見せ、旅行者数は1億4100万人に達しました。これは、2019年の同時期の旅行者総数の83%となります。24

世界中の旅行者と同様に、中国人観光客の海外旅行における消費行動や嗜好も変化してきています。Mastercardが中国人海外旅行者の旅行先上位10カ国の集計済み匿名支出データを分析したところ、富裕層の旅行者がまず海外旅行を再開し、航空券やホテルへの支出がパンデミック前の水準を大幅に上回ったことが明らかになりました。25 匿名化され集計された支出データから得られる詳細なデータを活用することで、観光当局はマーケティング戦略について情報に基づいた意思決定を行うことができ、ターゲットとなる旅行者をより正確に特定し、投資に対するリターンを高めることができます。


イベント主導経済の中で好機を捉える

情熱に突き動かされた旅行や体験を求めるニーズに後押しされる中、観光地はデータを活用して、スポーツ、展示会、フェスティバルなどの主要なイベントの影響を測定することもできます。支出データは、観光地が地理的および時間的な観点から主要な側面を詳細に評価するのに役立ち、マクロとミクロの両方の視点に対応できます。

集計され匿名化された支出データは、観光地が「主要イベントの累積的な経済的影響はどれくらいか?」や「この期間中の、居住者と国際・国内観光客の相対的な貢献度はどれくらいか?」といった疑問に答えるのに役立ちます。

Mastercard Economics Instituteは、「The Swift Lift」を分析し、ポップ・スターのテイラー・スウィフトによる「The Eras Tour」が2023年にアメリカ国内20都市に与えた地域経済への影響を明らかにしました。調査結果によると、レストラン、宿泊施設、小売店での支出が大幅に増加したことが明らかになりました。26

イベント主導経済:The Swift Lift

コンサートの観客

68%増

ツアー期間中、スタジアム周辺(半径2.5マイル)のレストランにおける支出は、1日平均68%増加

47%増

スタジアム付近の宿泊施設での支出は47%増加し、半径10マイル圏内でも同様に32%増加

出典:Mastercard Economics Institute、「イベント主導経済:The Swift Lift」

観光組織は、機械学習を使用した「合成コントロール」手法を導入し、イベントが実際には発生しなかった状況をシミュレーションすることで、その影響を測定し、最終的には主要イベントに関する将来の意思決定を改善することができます。

観光客の移動と協調する

データと分析は、観光客の流れを最適化する上でも重要なツールです。民間部門が支援すれば、観光地は包括的なデータ・モニタリングおよび予測システムを構築し、管理できるようになります。匿名化および集計されたデータは、政府、オンライン旅行代理店、ソーシャル・メディア・プラットフォーム、決済ネットワークからの入力を使用することで、複数のソースからほぼリアルタイムで安全かつ確実に収集および分析できます。

人口密度の高い中心部で著しい過密状態にあるプラハ市では、混雑を効果的に管理および緩和するために、観光客の行動をよりよく理解したいと考えていました。プラハ市観光局(Prague City Tourism)はMastercardと協力し、支出、観光客の行動、移動、集中度を分析するミクロ分析を実施し、同市の観光面での回復に役立てました。この調査により、プラハの300m×300mの都心部における混雑を解消するための新たなデータ・フレームワークが確立され、市当局が戦略上および運営上の意思決定を行うための情報が提供されるようになり、観光客の行動や嗜好に関する可視性が向上しました。27

「Tourism Insightsは、旅行市場におけるトレンド、変化、消費者の支出に関するデータを提供してくれます。これらのデータ・ポイントは、質の高い、データに基づいた戦略的意思決定を行う上で不可欠であり、ひいては私たちの活動の効率性を高めることにつながります。」

Josef Říkovský氏 Prague City Tourism

同様に、アムステルダムでは、市の観光組織がソーシャル・メディアから収集したデータを活用し、観光客向けの「Amsterdam City Card」を通じて旅行者の行動を追跡しています。これは、マーケティング戦術を展開して、同市のあまり知られていない地域を宣伝し、観光客を混雑した地域から離れた場所へ誘導することを目標としています。28 混雑が観光地管理組織にとって課題であり続ける中、旅行者の行動に関する可視的なデータを提供することは、旅行者を適度に間隔を置いて迎え入れたり、閑散期に迎え入れたりする上で大変重要です。

保護、強化、エンパワーメント

コミュニティを支援し、観光地を強化する方法

今日、あらゆる観光地の観光当局は、観光地の成長とのバランスを取りながら、気候変動、不均衡な経済発展、拡大し続けるデジタル・ディバイドによってもたらされる深刻なリスクを軽減するという難しい課題に取り組んでいます。これに対しては、観光バリュー・チェーン全体でのテクノロジーが、エコシステムを保護し、責任ある消費を促進するサービスを強化し、観光業の小規模・中小企業を支援するソリューションを提供すると見られています。

Mastercardのグローバル観光イノベーション・ハブ(以下「ハブ」)は、政府、観光当局、民間部門、NGOと協力し、技術的な専門知識と官民連携を活用してソリューションを共同で創出して、より持続可能で包括的かつレジリエントな観光セクターを構築するという共通の目標に取り組んでいます。

花屋での決済のイラスト

NGOであり、持続可能な観光組織であり、ハブの初期メンバーでもあるThe Travel Foundationは、観光地や民間部門と提携し、地域社会のニーズと環境とのバランスが取れた、従来とは異なる観光モデルを提唱し、実現させています。一方、Mastercardは観光組織と協力し、観光バリュー・チェーン全体の脱炭素化に向けたエンド・ツー・エンドな戦略を策定するとともに、中小企業が二酸化炭素排出量を削減できるよう支援するソリューションを展開しています。

もう一つの野心的で先駆的な取り組みは、スペイン観光省が観光革新管理技術国営企業(SEGITTUR)を通じて開発したプロジェクトであるスマート・デスティネーション・プラットフォームです。このデジタル公共インフラ・プラットフォームは、公共および民間のデータを結合・収集・一元化し、スペインの観光地のエコシステム全体で相互運用性を高める競争インテリジェンスを強化するとともに、継続的なイノベーションを促進し、観光バリュー・チェーンのすべての利害関係者(観光客、観光地、企業)をつなぎ、ニーズに対応することを目指しています。29

「デジタル公共インフラは、より公平でアクセスしやすい方法で必要不可欠なサービスを提供することにより、デジタルおよび経済的な包摂性を促進します。このパラダイムにより、観光地は、技術的なソリューションとイノベーションを通じて危機や市場の劇的な変化に迅速に対応する能力を強化することができます。」

エンリケ・マルティネス・マリン President, SEGITTUR

Mastercardは、テクノロジーとデータに関する専門知識を活用し、世界中の小規模・中小企業に個別のガイダンスとツールを提供して成長を支援することで、デジタル・ディバイドの解消に取り組んでいます。デジタル・ソリューションの利用を促進し、デジタル・スキル開発を強化し、融資へのアクセスを改善するための政策や投資は、観光業に特化した小規模・中小企業に大きな利益をもたらす可能性があります。

コスタリカでは、Mastercardの観光イノベーション・ハブのメンバーであるコスタリカ観光協会(Instituto Costarricense de Turismo)が、観光客の増加が小規模・中小企業にとってより良い機会につながるように、こうした取り組みを提唱しています。2023年、同協会は、コスタリカの「アイデンティティを持つ工芸品」プログラムと観光客をつなぐプラットフォーム「Tico Treasures」を立ち上げました。このプラットフォームは、国内17の団体に所属する300人以上の職人を支援しています。30 このプラットフォームを利用することで、観光客はコスタリカの地元製品を発見したり、職人コミュニティについて学んだり、商品を購入して自国に発送したりすることを、すべて単一のデジタル・プラットフォーム内で行うことができます。Mastercard、コスタリカ郵便局、コスタリカ銀行の連携により、この取り組みは、観光客に対してより本格的な体験を提供し、国民のデジタル経済へのアクセスを拡大し、小規模・中小企業のレジリエンスを強化することに貢献しています。

生成AIからタップ&ライドまで:次に起こることの先を行く

インタビュー:Quim Martínez Bosch氏

Mastercard公共部門センター・オブ・エクセレンス担当副社長兼観光セグメント責任者

キム・マルティネス・ボッシュ

Q:人工知能は観光バリュー・チェーン全体にわたって、どのような新たな機会を生み出していますか?

A:AIは現代を象徴する技術であり、新たなイノベーションの時代を切り開くものとなるかもしれません。AIツールは膨大な量のデータへのアクセスを平等にし、政府、企業、そして人々が、観光客や観光業界が求めるスピードで情報を統合することを可能にしました。観光セクターにおける生成AIの活用事例はまだ発展途上ですが、私たちが認識しているのは、すべての観光関係者にとって倫理的で透明性があり、信頼性が高く、有益な、責任あるAIこそが、唯一無二のAIであるということです。

Q:デスティネーション・プラットフォーム、いわゆるスーパー・アプリは、旅行者の体験をどのように変革するのでしょうか?

A:今日の旅行者は、旅行を計画し、管理しようとする際に、分かりづらく、しばしば複数にまたがるチャネルを使わなければならないことがよくあります。近年、デスティネーション・プラットフォーム、いわゆるスーパー・アプリが、旅行者の旅を効率化し、より高度なパーソナライゼーションを提供するようになってきています。Visit GreeceアプリやSEGITTURのスマート・デスティネーション・プラットフォームなどのスーパー・アプリとデスティネーション・プラットフォームは、地域経済に利益をもたらしながら、旅行者の体験を向上させることができます。これらは複数のサービスを1つのプラットフォームに統合することで、よりシームレスな観光客体験を実現し、滞在期間の延長やリピーターの増加を促すことができます。また、統合された決済システムにより、観光客が観光地を探索しやすくなり、継続的な消費体験を得ることができるようになります。

Q:未来の観光におけるスムーズな交通手段はどのようなものになるでしょうか?

A:観光地が旅行者の体験を向上させつつ環境の持続可能性を高めようとする中で、観光客が目的地までスムーズに移動できるように、シームレスな交通手段を確立する必要があります。飛行機、電車、バス、マイクロモビリティなど、さまざまな交通手段を組み合わせた統合交通ネットワークがあれば、1枚のチケットで複数の交通ネットワーク間をシームレスに移動できるでしょう。さらに、非接触型決済ネットワークが拡大し、タップ&ライドが普及して、モバイル・ウォレットやスーパー・アプリの使用が促進されれば、旅行者はシームレスに交通費を支払えるようになります。

Q:新しいテクノロジーは観光産業においてどのように持続可能な成果をもたらしていますか。また、今後数年間で最も大きな影響を与えると思われるイノベーションは何ですか?

A:近年、観光・旅行業界において、さまざまなテクノロジーが、より環境に優しいエネルギーへのアクセスを可能にし、資源消費と排出量を削減し、廃棄物管理を改善することで、施設やインフラの管理を最適化するのに役立っています。しかし、これらの取り組みだけでは、実質排出量ゼロを達成するには不十分です。Mastercardの観光イノベーション・ハブは、観光業界のより持続可能な発展を促進する上で、AIが持つ可能性を認識しています。当社の持続可能性に関する研究から得られた経験とデータにより、中小企業や旅行者がより持続可能な行動を取るのを妨げる主な障壁の一つが、信頼できる情報の不足、あるいは情報を効果的に活用する能力の欠如であることが明らかになっています。生成AIツールの登場により、中小企業と旅行者の両方が、より的確で情報に基づいた消費判断をリアルタイムで行えるようになるでしょう。私たちはハブ・パートナーと協力し、バリュー・チェーン全体にわたる持続可能性の促進の一環として、観光地を支援するためのさまざまな新しいソリューションを統合しています。

結論

旅行者の期待が急速に変化する時代において観光地が先手を打ちたいなら、ただ現状を維持するだけでは不十分

観光地は、個人的なレベルで共感を呼ぶユニークで記憶に残る体験を提供すれば、競争の激しい市場で差別化を図ることができるでしょう。データ分析を活用すれば、観光地は旅行者の行動を理解・予測できるようになり、キャンペーンの企画・改善に役立てることができます。新しいテクノロジーを取り入れることで、観光客の体験が向上し、シームレスでパーソナライズされた旅が実現します。このパーソナライゼイションは、到着のはるか前から始まり、出発後も続くものです。



さまざまな観光地が未来を見据える中、Mastercardの観光イノベーション・ハブは、パートナーシップを築き、業界の変革によってもたらされる機会を捉え、旅行者、地域社会、そして経済に利益をもたらす革新的なソリューションを共同で創造する準備ができています。また、ハブは、業界関係者との連携を通じて、旅行者の体験を向上させ、より持続可能で包括的かつレジリエントな観光セクターを構築するための新たなアプローチを開拓しています。



私たちが力を合わせれば、観光地が現代の旅行者の期待に応えるだけでなく、それを上回るような未来を創造し、すべての人にとって長期的な成功へと導くことができるでしょう。

Mastercardの、より持続可能で、レジリエントで、包括的な観光産業の実現に向けた取り組み

Mastercardのロゴ。

1. 世界経済フォーラム「観光業はパンデミック前の水準に回復も、依然として残る課題」2024年5月21日

2. Mastercard Economics Institute、「2024年の旅行トレンド:境界を超える」2024年5月14日

3. 国連観光機関「世界の観光業、2024年の第1四半期にパンデミック前のレベルの97%に到達」2024年5月21日

4. Mastercard Economics Institute、「2024年の旅行トレンド:境界を超える」2024年5月14日

5. 世界経済フォーラム「旅行・観光開発指数2024」2024年5月21日

6. Mastercard Economics Institute、「2024年の旅行トレンド:境界を超える」2024年5月14日

7. Mastercard Economics Institute「2024年の旅行トレンド:境界を超える」2024年5月14日

8. Mastercard「欧州の体験型経済、飛躍的発展の見込み」、Mastercard2024年3月26日

9. Mastercard「欧州の体験型経済、飛躍的発展の見込み」、Mastercard2024年3月26日

10. McKinsey & Company「現代の旅行スタイル」2024年5月29日

11. Dept. Agency2024年の旅行業界を形作るデジタルトレンド2024年3月28日Hilton2023年の旅行者:旅行体験を革新する新たなトレンド2022年11月

12. Mastercard Economics Institute「2024年の旅行トレンド:境界を超える」2024年5月14日

13. Booking.com2024年の旅行予測

14. 国連観光機関グローバルおよび地域別観光パフォーマンス2024年7月22日

15. Mastercard Economics Instituteご存知ですか?ヨーロッパの夏の休暇で、旅行者が贅沢する場所、節約する場所、パーティーする場所2024年

16. Booking.com持続可能な旅行データが示す消費者にとってのの継続的な課題と、業界を超えたコラボレーション機会の拡大2024年4月22日

17. Booking.com持続可能な旅行データが示す消費者にとってのの継続的な課題と、業界を超えたコラボレーション機会の拡大2024年4月22日

18. Expedia Group2023年旅行者価値指数

19. Forbes「Z世代が体験主導型経済を牽引:観光・アトラクションブランドが注目すべき点」。2023年5月8日

20. VisitScotland国際観光パフォーマンス

21. Mastercard「MastercardとInvest Indiaが体験型旅行を再定義:インドで没入型文化体験向けに強化されたpriceless.comを発表」2023年9月12日

22. SkiftQ&A:スペインが新たなシリーズで持続可能な観光に関するグローバル対話を開始2024年7月12日

23. MastercardEspaña, considerada uno de los mejores destinos turísticos para los viajeros sensibles con la sostenibilidad2023年6月5日

24. 世界観光連盟、Mastercard、trip.comAlipay海外旅行消費トレンドレポート2024年7月

25. 世界観光連盟、Mastercard、trip.comAlipay海外旅行消費トレンドレポート2024年7月

26. Mastercard Economics Instituteイベント主導型経済:The Swift Lift、2024年2月

27. Mastercard観光イノベーションハブデータ分析を通じてプラハの観光回復を推進

28. McKinsey & Company観光・ホスピタリティ業界の現状20242024年5月

29. SEGITTUR.スマート・デスティネーションズ・プラットフォーム

30. Instituto Costariccense de turismo、Mipymes turísticas ahora podrán vender sus productos en línea a través de la plataforma tico treasures、2023年12月14日