想定読了時間5分・2024年
決済業界に携わる者として、支払が正しく行われること、言い換えればスムーズで迅速な決済を実現すること、に注力しています。だからこそ、私が実際に決済に関する一連のトラブルを経験した際、それがあまりにも衝撃的でしたので、皆さんと共有する価値があると思います。
先日の海外旅行で、妻と私は公共の電車に乗る機会がありました。切符を買うために券売機まで歩いて行きましたが、なんと故障中でした。そこでモバイルアプリをダウンロードしようとしたのですが、スマートフォンの電波が悪く、読み込めませんでした。幸いにも公共交通機関の切符売り場がすぐ近くにありましたが、あと5分で閉まるタイミングでした。私は走って売り場に駆け込み、Google翻訳を片手に「切符は何枚必要か?」に関する大量の質問を浴びせて、気の毒な公共交通機関の職員を困らせてしまいました。「ピーク料金はありますか?」「往復切符の場合どうなりますか?」ようやく切符売り場を出てプラットフォームへと急ぎましたが、本当に正しい切符を購入できたのか確信できないままでした。帰りの電車で、切符が実際に有効ではないことに気づきました。ここから再び、切符売り場探しが始まったのです。
これは確かに苛立たしい出来事でした。今度は、次のような状況を想像してみてください。
妻と私は改札口に向かい、普段使っているデビットカードかクレジットカードの情報が登録されたスマートフォンを取り出し、決済端末にタッチしてそのまま歩いて乗車します。先ほどの状況とは対照的に、私たちはこのプロセスに5秒も費やさず、観光に出発できるでしょう。これは単なる希望的観測なのか、それとも現実的な可能性なのでしょうか?
一方、長年にわたりデジタル体験の最適化に取り組んできたeコマースチームは、エンゲージメントの向上が見込まれるユーザーに対して彼らが関心を持ちそうな商品を提案する、という現在の業務を超えた、更なる一歩を踏み出す準備ができていました。また、GlassesUSA.comが、従来型の機械学習ベースの「おすすめ」をホームページ上で提供する場合とDynamic Yieldの高度なディープラーニングアルゴリズムを比較するテストを行った結果、後者はたった1つのウィジェットを使用することで、購入数で68%、収益で88%の増加を達成できることを発見しました。
初めて訪れる場所で公共交通機関を利用するのは、魅力的な体験になり得ます。しかし、一般の利用者に話を聞くと、まったく違う意見を聞くことになるでしょう。カリフォルニア大学バークレー校とオハイオ州立大学が実施した調査によると、19か国で調査対象となった通勤者のほぼ半数が、交通手段ごとに異なる切符が必要な公共交通機関を不便だと感じていることが明らかになりました。多くの利用者は、私たちが経験した無駄に長い待ち時間から感じたのと同様に、支払いを行って乗車するのに要する時間が長すぎるという不満を抱えています。これに対する代替案として、クローズドループ型とオープンループ型の両方の交通機関向け決済システムはいずれも、利用者が非接触でシームレスに運賃を支払う手段を提供できます。
クローズドループ決済システムとは、交通事業者または当局が独自の発券システムを使用して決済カードまたはチケットを発行するシステムであり、より多くのインフラとメンテナンスが必要となります。クローズドループ型システムは、決済カード上の切符の金額を検証、保護、管理するために独自のデバイスを必要とする場合があり、該当する特定の交通機関でのみ使用できます。
ただし、交通機関にとってはいくつか欠点があるかもしれません。クローズドループ型決済テクノロジーは、決済ネットワークが特定の交通機関専用であるため、相互運用性が限られています。さらに、クローズドループ型決済では決済データが特定のカードに保存されるため、利用者はカードや切符を紛失した場合には全ての資金を失うという高いリスクによりさらされることになります。利用者にとってのもう一つの課題は、適切な金額の資金をチャージ済かどうか、という点です。チャージ金額が少なすぎると、切符売り場に慌てて走ることになるでしょう。すぐに使わない金額をチャージしすぎると、自由に使える資金に影響を及ぼす可能性があります。
2020年以降、タッチ決済の必要性が激しく強まったことで、より多くの交通機関が公共交通を支えるためにオープンループ型決済テクノロジーへと移行しつつあります。オープンループ型決済テクノロジーは国際的なEMV規格に基づいて構築されているため、利用者は普段使用している銀行発行の非接触型のEMVクレジットカードやデビットカード、またはスマートデバイスを使って運賃を支払うことができます。現金をあちこち探したり、発券機に触れたり、プリペイド交通カードとその中の資金を紛失したり、私が経験したように切符売り場を探して混雑した街中を奔走したりする必要はもうありません。
Enghouse Transportationの記事は、米国公共交通協会(APTA)の発表を引用する形で、世界中の150もの主要都市が、従来のクローズドループ型決済システムからオープンループ型決済システムへの移行を検討していると報じました。この情報は、米国の公共交通機関で使用されるオープンループ型EMVカードが来年までに1,300万枚に達することと一致しています。
ここにおられる聴衆の皆様の一人一人にとって、公共交通向けのオープンループ型決済テクノロジーは以下のような利点があります。
交通機関にとって、オープンループ型決済テクノロジーはチケットや交通カードの発行や管理が不要になるため、柔軟性が高く、メンテナンスの手間が少なくて済みます。運用面から見ると、運賃徴収が簡素化され、管理コストの削減につながります。
地方自治体も、オープンループ型交通決済システムから恩恵を受けることができます。地域の交通機関でコスト削減が実現する可能性があり、都市側も地元住民と観光客の双方がよりアクセスしやすく包括的な方法で市内を移動できることを高く評価するでしょう。また、都市がオープンループ型の交通システムを導入することで、交通決済の目的に限定して発行されるカードや切符よりも持続可能なソリューションから恩恵を受けるようになる可能性があります。都市において住民それぞれの自家用車よりも公共交通機関がより多く利用されることには、長期的な環境面でのメリットもあります。
利用者の方々にとってのユーザー体験におけるメリットは、私の実体験からお伝えできます。オープンループ型決済ソリューションを使用すれば、切符売り場や券売機に立ち寄る必要がなく、特別なアプリをダウンロードしたり、切符販売サイトにカード情報をわざわざ入力する必要もありません。また、乗車料金が不足しないため、または乗車後にカードにお金が残ってしまわないために、正確な必要額を計算する必要がないので、精神の平穏を得ることができます。その代わり、公共交通機関の利用者は、端末にカードやスマートデバイスをタッチするだけで乗車できるのです。
幸いにも現在、交通機関向けのクローズドループ型およびオープンループ型タッチ決済の両方が、世界中の多くの交通機関とその利用者にとって現実のものとなりつつあります。こうしたシームレスな交通決済テクノロジーの進歩は、大都市や観光地の多くで採用が広がっています。
例として、モルディブで最も長く存続している上場企業であるMaldives Transport and Contracting Company Plc(MTCC)を挙げましょう。MTCCは、公共交通サービスを市民や観光客にとってより便利でシンプルなものにする必要性を認識していました。
MTCCは、現地の状況を調査した上で、南アジア初となるマルチモデル対応のオープンループ型の交通決済・デジタル発券システムを導入しました。これにより、同地域の交通機関利用者は安全で便利かつシンプルな決済および乗車方法で移動できるようになりました。この新しい交通決済システムは、導入以来、現金に代わるタッチ決済やオンラインでの運賃支払いを可能にしたことで、同地域のデジタル変革を推進してきました。
次の休暇のために旅行を予約したくなってきましたね。